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変わりモノには価値がある・・・ハズ?

どうやれば日本は復活できるのだろうか?:続編(前半)

前回までのあらすじ

ここまで、モジュラーデザインとは何かということをご説明し、それに向けてのアプローチの仕方、また実行に際しての壁のお話を致しました。
これからは、これらのことを踏まえたうえでの、モジュラーデザインの進め方についてお話しします。

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   スカニア社HPより参照 

モジュラーデザインを導入するには、

先ほどお話ししましたように個別仕様受注生産型企業でモジュラーデザインを進めるためには、3つのことに対応していく必要があります。
1)要求、要件を見直し、要求にきちんと応えることができる要件、外部仕様にすることで製品価値を向上させ、そのうえで外部仕様をモジュール化します。 
2)また、先ほどもお話ししましたが、部品点数が数百点でも結構な規模のデータになります。 これを数万点に及ぶ製品全体を対象とすると、膨大にかかる時間を前にして挫折してしまいます。 対象範囲を適切に絞り、段階的な取り組みすることで、少ない工数でモジュラーデザインに取り組めるようにしていくことが必要となります。
3)また、モジュラーデザインを進める際に機能と実現手段の見直しを並行して行い、コストダウンに取り組む必要があります。 これらのことを踏まえたうえでのモジュラーデザインの進め方についてご説明します。

製品価値の定義

まず最初に製品の価値について考えてみたいと思います。
標準化や共用化とモジュラーデザインの違いの一番の理由は、製品の価値を高めることができるかどうかというところにあります。
私たちは会社に入り仕事を始めるうえで、価値とは機能とコストで定義されると学んできました。 このため、日本企業は、機能を増やし、コストを削減するということを長年続けてきました。 日本の電機メーカは各社同じような製品を開発し続け、結果、どの会社も幸せにはなりませんでした。 ヒューレットパッカード社は、この公式では差別化ができないと感じ、価値を、ベネフィット、顧客が感じる利便とコスト、顧客が支払うコストで定義しなおしました。 ベネフィットは、機能に代表されるような容易に測れる客観的要素とステータスに代表されるような容易には測れない主観的要素があります。 コストには、商品価格に含まれるものと、商品とは別に支払われるものがあります。 商品の価値をあげるには、ベネフィットを大きくする必要があり、その中でも、容易に測れない主観的要素をどれだけ取り込めるかがカギになります。 私たちは、機能向上が商品の価値を高めると信じて製品開発を行ってきました。 それでは、ベネフィットと機能、ファンクションの違いがなんであるかを考えてみましょう。
ベネフィットとファンクションの違いは、先にお話ししましたように、ベネフィットには主観的要素も入っており、別の言い方をすると顧客視点の価値となります。 それに対して、ファンクションは客観的要素のひと項目であり、非常に判りやすい性格のものであり、それゆえ作る側の視点の価値となります。 数年前から、モノからコトへと言われ始めておりますが、これも作る側の視点でビジネスを続けていくことの限界が生じた結果、顧客視点での価値の創造に転換が必要ということを示す事象と思います。 ところが、日本企業で長年仕事をしておりますと、モノとの関係が強いためか、顧客視点の価値、すなわちベネフィットをどう創り出せばよいか戸惑うことになります。 なんでもそうですが、何かを始めるときには見える化、可視化する必要があります。 では、ベネフィットは、どうやって可視化するのでしょうか。 そのためには、ニーズ分析を行い、顧客の声や声なき声をしっかりと理解し、それを要求、要件一覧にまとめることでベネフィットを外部仕様に落とし込む必要があります。

標準化とモジュール化

顧客視点でのニーズを抽出したあとは、抽出したニーズをどうやってモジュールに落とし込むか、ということになります。 ここでの課題は、より少ない部品種類でより多くの顧客を掴むことを安いコストで実現するということです。 性能値はどこまで広げるべきか、構造の簡素化はどこまでやれば良いのかということに悩みます。 レバレッジ設計の観点から言いますと、性能値に関しては、顕在ニーズは集約し、潜在ニーズは拡大するという進め方が基本になります。 また、構想の簡素化に関しては、潜在ニーズに関係するユニットや技術的進捗があるユニットは、できるだけ独立したモジュールにし、顕在ニーズのみのユニット、技術的進捗が無いユニットは、部品種削減を基軸にした標準化で対応するという進め方が基本になります。

モジュラーデザイン3種類のアプローチ

モジュラーデザインを進めていくうえで品質機能展開表を活用すると先にお話ししました。 顧客視点のアプローチ、設計視点のアプローチ、生産視点のアプローチによって品質機能展開表にデータをまとめていきます。 潜在ニーズ、顕在ニーズは顧客視点のアプローチにおける要件のモジュール化において検討します。 構造の簡素化は、設計視点のアプローチにおける製品レイアウトのモジュール化で検討します。
具体的な進め方としましては、まず、顧客仕様書より顧客の要求から装置に必要な要件を纏めるという要件の抽出作業を行います。 その際に、各装置と言いますか機種間で共通に必要な要件は、ベースとして変更しない要件として取り扱います。 これに対して、機種間で要否や内容がが別れるような要件はモジュール化の対象とします。 次に、装置の機能を整理して、その機能の目標値が固定か可変かの分類を行い機能の抽出、分類作業を行います。 目標値が可変である機能項目がモジュール化の対象となります。 最後に、要件と機能のマトリックスで、ベース、バリエーション、オプションに振り分けることでモジュールの整理を行います。 こうして出来上がった品質機能展開表のデータに従って設計を行えば標準化とも共用化とも違う、本来の意味でのモジュール化を実現できるようになります。 

今回はここまでにして、次号でモジュラーデザインの核であります3つのアプローチの具体的な進め方について見ていきましょう。

(参考図書)

 

 

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