変わりモノがいい!

変わりモノには価値がある・・・ハズ?

どうやれば日本は復活できるのだろうか?:続編(後半)

それでは、続きをお話しします。

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要件のモジュール化

まずは、顧客視点のアプローチである、要件のモジュール化を見ていきましょう。
要件のモジュラー化は、装置の主性能、付加性能、安全品質、操作メンテ、環境他の領域における、要求、要件、要件値、判定基準等の内容を整理することで行います。
この作業を行う上で注意することは、要求と要件の違いを理解しておくということです。 要求とは顧客が望んでいることで製品やサービスを特定していません。 それに対して、要件は製品やサービスを特定し、要求に応える方法と値を規定しています。 例えば、半導体製造装置のケースでは、目的の膜を処理したい、というのは要求であり、膜を処理するのに必要なガスを流れる流量調節器を装備する、というのは要件になります。 要件には、潜在ニーズ分析から抽出した要件も加えるようにします。 このようにして抽出した要求、要件を、主性能、付加性能というような分類ごとに整理し、整理された各要件に対して要件レベル、基礎判定、などの評価判定に基づいて最終評価である、その要件は、必須要件であるか、値選択要件であるか、削ぎ落し要件であるか、別シリーズ化要件であるかを判定していきます。 これにより要件のモジュラー化を実現できます。
要件のモジュラー化には、潜在ニーズ分析から抽出した要件も加えるとお話ししましたが、具体的にどうやって要件を抽出するのでしょうか。 そのためには、顧客の行動を深く理解する必要があります。 製品に対して興味、関心を持ち、検討し、購入するというような製品のライフサイクルにおける顧客の行動や顧客の要求、問題に感じていることを製品、顧客ライフサイクル表に整理することにより注目すべき顧客の要求を抽出していきます。 それを製品の対象となる顧客を、幾つかのグループに分け、グループ化した顧客の集合体ごとに整理して、潜在ニーズがどこにどういうものがあるかを考察していきます。 こうやって潜在ニーズに対応する要求を抽出していきます。

機能構成のモジュール化

要件のモジュール化の次は、設計視点のアプローチである、機能構成のモジュール化について見ていきましょう。
機能構成のモジュール化をするには、まず、何をしないといけないのでしょうか。
要求、要件は、商品の外部仕様を表しています。 製品を実現していくためには、外部仕様を内部仕様に落とし込んでいく必要があります。 落とし込まれた内部仕様は機能を表していますので、内部仕様をモジュール化することで機能構成のモジュール化を行います。 外部仕様を内部仕様に落とし込む作業に、品質機能展開表を活用します。
皆さんの中にも品質機能展開表を使われたことがある方がいらっしゃるかとも思いますが、実務担当レベルで、これを使うには結構ハードルが高く、挫折するケースも多々あると思っています。 挫折する理由は幾つかありますが、要件や機能の表現方法、機能をどこまで深堀りすれば良いか、深堀りの具合によっては時間が膨大にかかる等があると思います。 私自身の経験から、一番の問題と感じたのは時間的な面でして、これを如何にして効率よくできるかがポイントになると思っています。
品質機能展開表を効率よく作成するには、機能を効率よく定義していく必要があります。 通常の方法ですと、機能の定義は、商品やサービスの外部仕様である要件の抽出を行い、抽出した要件をグルーピング化し、そのグルーピング化した要件に対して機能の洗い出しを行うという手順で行っていきます。 このやり方を積み上げ式と言っていますが、積み上げ方式は要求の理解から入るため、やる人に高いスキルが求められ、かつ多大な時間がかかり、担当者への大きな負担をかけることになります。 結果、品質機能展開表を使わなくなるというのが実態でした。 そこで私たちが考えたことは、商品が既にある場合には、商品の機能を特性グループでグループ化っすることにより時間を大幅に短縮するというものです。 これをブレークダウン方式と呼んでいます。
ブレークダウン方式で洗い出しな内容と、積み上げ式で洗い出されて出てきた内容と突き合わせて、お互いの抜け漏れを補完するという方式です。 これによって、機能を定義する時間は大幅に低減できます。
また、ブレークダウン式で既存製品の機能の洗い出しを行う際に、機能の階層を何階層で深堀するかによって必要になる時間は大きく変わってきます。 私たちは、機能の階層を、機能グループ、親機能、子機能の3段階で洗い出すようにしています。 具体的には、機能グループは、商品やサービスの利用目的による分類とし、親機能は、目的のための機能の大まかな分類とし、子機能は、具体的な機能の内容と設定値としています。 機能の洗い出しで注意することは、具体的な手段を書いてはいけないということです。 例えば、機能グループを照明、照らすことですね、とすると、親機能には、発光する、があり、その機能の実現方式として、エルイーディー方式や蛍光灯方式はというものがあげられます。
機能の洗い出しが終わり、要件のモジュール化を満たすための、機能構成のモジュール化検討を行います。 その作業を行う際に注意すべきことがあります。 それは、大まかな機能の固まりを機能グループとして定義し、機能グループの組み合わせで製品を実現するという考えです。 こうすることで、大きな漏れなく機能構成を定義することができます。 また、機能グループを組み合わせるためには、機能インタフェースを定義し決める必要がでてきます。 機能グループと機能インタフェースの組み合わせで機能構成のモジュール化を行います。
それでは、機能グループと、その中に定義する機能の洗い出しの仕方を具体例を使って見ていきましょう。
この作業を効率的に行うには、まず、製品の作動プロセスを時系列的に並べてワークフローとして表現すると良いでしょう。
例えば、半導体製造装置の中のエッチング装置を例に考えると、ウエハの搬送、ウエハの加工、ウエハの搬出がメインフローになります。 このメインフローの各項目を機能グループとして機能の洗い出しを行います。 例えば、ウエハの加工には、ウエハを入れる容器を真空にし、容器内にプラズマを発生させ、そのプラズマを使ってエッチング加工する、という親機能があります。 容器を真空にするという親機能には、容器を密閉する、容器から空気を抜く、真空状態を保持する、という、子機能があります。 機能を洗い出す際には、容器内にプラズマを発生させる、というように、主語、述語、目的語で表現するようにします。 ワークフロー図を用いて検討することで、機能の洗い出しを抜けなく行うことができ、主語、述語、目的語で表現することで機能の曖昧さを排除できるメリットがあります。 ワークフローとしては、メインフローだけでなく、頻度が少ないが重要なワークフロー、非定常時のワークフローも対象として、機能グループ、機能の洗い出しを行います。
先ほどの例は性能を左右する機能についての例を示しましたが、同じように、構造や操作、安全やモノづくりに関する機能に関しても機能グループごとの洗い出しを行います。
例えば、構造という機能グループにおいては、全体強度を確保する、部位取り付け位置を確保する、振動やたわみを吸収する、という親機能が洗い出されます。 これらの親機能に対する子機能の洗い出しも行います。
機能の洗い出しの事例として、半導体製造装置における主性能を対象とした機能グループ、親機能、子機能抽出をしてみます。 機能グループには、ウエハをエッチング処理する、ということをあげており、親機能には、エッチングのための準備をする、とか、ウエハの温度を制御するというような機能が洗い出されます。 また、エッチングのための準備をするという親機能に対して、チャンバの表面状態を安定させる、とか、ステージの温度を安定させる、というような子機能が洗い出されます。
以上、ご説明してきました、要件のモジュール化の成果物と機能構成のモジュール化の成果物を品質機能展開表の上にドッキングします。 要件を実現する機能を、要件の実現に必須の機能である主たる機能に対して◎を、要件値が変わったときに影響を受ける関連機能に対して〇を、要件をオプション化したときに影響を受ける関連機能に対して△をつけて、要件と機能の関連付けを行います。

製品レイアウトのモジュール化

最後のアプローチが、構造視点のアプローチであり、これは製品レイアウトのモジュラー化に関するものです。
製品レイアウトの洗い出しとしては、対象製品の構造を、親ユニット、子ユニット、サブユニットというように階層表現することで行います。
こうやって洗い出した製品レイアウトと機能の関係の洗い出しを行います。
機能を実現している構成部位に◎を記載し、併せて実現のための手段を記載します。
機能値が変わった時に影響を受ける構成部位に〇を記載し、併せて影響を受ける部品を記載します。 また、機能をオプション化した時に影響を受ける構成部位に△を記載し、併せて影響を受ける部品を記載します。 これで、製品レイアウトと機能の関係を洗い出すことができます。


以上の作業で、要求、要件と機能構成の関係、製品レイアウトと機能構成の関係を洗い出すことができました。 この作業でできた、要件のモジュール化、機能構成のモジュール化、製品レイアウトのモジュール化に不整合がないかを、これら3つのモジュール間で双方向の関係が成立しているかどうかを調べることで確認します。

3つのモジュール化の関係が成立していることが確認できましたら、いよいよ開発方針を立てることになります。 すなわち、どの顧客向けに、どのシリーズまでを範囲とするのか、選択型の外部仕様への移行をどう進めていくのかという、製品仕様とラインアップに関する方針を決めることができます。 また、選択型外部仕様を実現するために機能改良が必要なところはどこか、コスト削減や短納期を実現するために構造のモジュラー化をどこからどのように進めていくかという、機能構成と製品レイアウトのモジュラー化に関する方針を決めることができます。 方針が決まったら、いよいよ設計着手です。

最後に

モジュラーデザインの目的は、既にイノベーション型製品を市場に投入して成長過程に入っている海外のメーカとのし烈な競争に勝つためであり、そこに日本企業が得意とするカスタマイゼーションを、個別カスタマイゼーションではなく、マスカスタマイゼーションとして効率的に実現し、より少ない部品種類でより多くの顧客を掴むことです。
 ここで勝たなければ日本が勝つ領域は非常に厳しくなります。 日本の良いところ得意なところ海外メーカの弱点をきっちりと把握し勝っていきましょう。 そのための支援はいくらでもやりたいと思います。 共に進化していきましょう。

(参考図書)

 

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