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どうやれば日本は復活できるのだろうか?:前編

日本復活への指針

この記事では、設計・開発部門におけるモジュラーデザインの必要性と効果についてと題して、個別仕様受注生産型から仕様選択量産型への転換の仕方についてお話をさせて頂きたいと思います。 それを通じて低迷している日本の思考を復活させる一助になればと思います。

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お話の流れとしましては、まず、世界の変化、日本の状況を踏まえて、モジュラーデザインが何故必要とされているのかという背景をご説明し、モジュール化とは何か、モジュラーデザインとは何か、標準化やプラットフォーム化と何が違うのかというご説明を通じてモジュール化実現のためのモジュラーデザイン手法のポイントをお話しし、最後に具体的な事例を通じて個別受注生産型から仕様選択量産型へ転換するためのモジュラーデザインの進め方をご説明したいと思います。

1. はじめに
モジュラーデザインは何故必要とされているのでしょうか。

19世紀は機械と金属と石炭が花形産業として栄えていました。19世紀はイギリスの時代でした。
20世紀は電機と化学と石油の時代で日本が輝いていた時代であったと思います。21世紀は電子とソフトと新エネルギーの時代に移ってきています。
時代から時代に移り変わるときには、変節期があり、成長を謳歌した企業が不連続な領域を乗り越えられずに苦労の末に衰退していく姿が沢山見られました。
この時の変節期では、飛行機がでてきますが、なんとイギリスは蒸気で飛ぶ飛行機を本気で作ろうとしていました。蒸気機関を使って羽をばたばたはばたかせて飛行機を飛ばそうとしました。
20世紀に、日本は、技術的にも仕組みにおいてもアナログで成功を収めた結果、アナログからデジタルへの移行が上手くいかず未だに変節期の真っただ中にいます。
ところが米国を代表とする世界の国々は既にこの成長期に入っており、これが我彼の今の違いを表していると思います。

各国の成長の度合いをGDPの推移で見ていきたいと思います。
第二次世界大戦後1990年までに世界は6倍の成長をしています。
1990年以降の各国のGDPの推移をこのグラフに示していますが、2000年から2017年の18年間に世界は3倍弱の成長をしています。
主役はアメリカです。
アメリカや中国は既に次の成長期に入り、成長の中間点ぐらいまで来ていることが判ります。
それに対して、日本はほとんど成長できておらず、まさに変節期の真っただ中という状況です。
日本にいると、日本だけでなく世界の他の国々も日本と似たような状況なのではないかと多くの人が思っているかもしれませんが、極論を言えば日本だけが変わることができていないのです。

2017年時点でも1位のアップルの時価総額は100兆円に迫っていました。
日本で一番のトヨタで27兆円でした。
3位のアマゾンの時価総額は64兆円で、日本の2位から16位の時価総額の合計とほぼ同じ値になっています。
時価総額は、売上と利益率を掛けた値に相関があり、日本企業の時価総額が低いのは売上だけではなく利益率の低さを表しているとも言えます。
例えばアップルは売上高が30兆円で利益率が30%であるので時価総額が100兆円近くになっています。
トヨタは売上高が27兆円で利益率が10%で時価総額が27兆円となっています。
日立製作所は売上高は9兆円以上ありましたが利益率が6%台と低いため時価総額は4兆円台と低い値になっています。
これからの成長の可能性を示す指標の一つであるイノベーションランキングの上位50社に日本企業は3社しか入っていませんでした。
ここにも日本企業が苦しんでいる姿が現れていると思います。

パナソニックは20世紀に大きく成長し、今まさに21世紀に向けた変節期に苦しんでいます。
そういう中でアップルやサムスンは今まさに成長期を謳歌しています。
20世紀にあれだけ成長を謳歌した日本家電企業は、アップルやサムスンスマートフォンやPCの領域で、また、TVの領域でも全く勝てなくなりました。
今、パナソニックに代表されるビーツーシー型ビジネスの企業で競争に敗れた日本家電企業は世界の部品企業として生き残る道を探っており、結果、変節期から抜け出すことができない状況が続いています。

さて、ここまでのお話は、世界は次の成長期に移行しているのに、日本は未だ変節期で苦しんでいる、ということのご説明を致しました。
何が起きているのでしょうか。
実は、今、隆盛を極めているアップルは1990年代半ばに潰れかけました。
潰れかけたアップルは何故復活できたのでしょうか。
アップルの復活はジョブズ復帰後の魅力的なマックなども理由に挙げられますが、一番の理由はアイフォンの存在だと思います。
アイフォンが世に出たのは2007年です。
その前に日本では1999年にアイモードが使われ始めました。
アイモードはアイフォンに敗れました。
違いは何でしょうか。
アイモードは便利な電話にしかならず社会や暮らし方を大きく変えることはできなかったが、アイフォンは社会や人々の暮らし方を大きく変えたということだと思っています。


21世紀の今、戦う主戦場は、暮らしの根幹、モノづくりの根幹、労働スタイルの根幹、移動の根幹を変える領域に移っています。
アイフォンもその一つですし、車の自動運転もその一つです。
運よく、これらの領域は未だ20世紀型を引きづっています。
だからトヨタの社長が危機感を強くしてトヨタを変えようと奮闘されているのです。
かつて日本企業は、この領域、すなわち社会インフラは得意でした。
しかし、アナログからデジタル技術への移行が上手くいかずアメリカや中国に先行されています。
20世紀にウインテルで市場を制覇したインテルトヨタと同じように強い危機感の元、数百ドルのシーピーユーから数ドルのアイオーティーバイス、システムに大きく舵をきっています。
日本もできるだけ早く準備を整えてこの主戦場に参入しないと失われた20年度どころか失われた100年になってしまいます。

でも不思議ですよね。
20世紀に我が世の春を謳歌した日本が技術力はあるのにこんなに苦労するなんて。
私は、1981年に日立製作所に入り、38年間工場で設計開発業務に携わってきました。
若いころ上長から、良いものができれば売れる、と言われ続けて仕事してきました。
この言葉を胸に真面目に働いてきましたが、事業は良いときもあれば悪いときもあり、利益の面では厳しい局面を何度も経験してきました。
日本企業の多くが、技術を利益に結びつけることができないできました。
まさに、これが日本企業の問題であることを痛感しています。
日本の企業は技術力があります。
これは、国際特許出願件数や研究開発費の額にも表れています。
ところが、営業利益率が表しているように、技術を利益に結びつけることができず、新しいビジネスを生むこともできていません。
アメリカや主要アジアの企業の利益率に比べ日本企業の利益率は大きく見劣りします。
日本の主要企業の利益率は5%程度ですが、これでは研究開発費も回収できません。
では、どうすれば技術を利益に結びつけられるのでしょうか。

このことを考えるために、日米の主要電機電子企業を分析しました。
分析の結果、企業は3つのタイプに分類されることが判りました。
すなわち、
マイクロソフトインテルのように高い利益率と高い研究開発費のインベンション型企業、日本企業に代表される低い利益率と中程度の研究開発費のインプルーブメント型企業、デルなどの低い利益率と非常に低い研究開発費のディストリビューション型企業、です。
ところが、アップルは、売上総利益が39%を超えるという非常に高い利益率と研究開発費率3.6%と低い研究開発費の企業であり、これら3つの分類のどれにも属していません。
アップルのような、技術を利益に結びつけることができる企業を、イノベーション型企業と呼んでいます。
イノベーション型企業は、21世紀型の企業タイプであり、技術を利益に確実に結びつけることができています。

イノベーション型企業の例としてのアマゾンの事例を考えます。
あれ、アマゾンの利益率は低いぞ、と思われカモしれませんが、彼らは今は利益を出すことよりも規模を大きくすることに注力しているために利益を出していないだけと認識しています。
トイザらスはアマゾンに敗れました。
アマゾンは、日本の小売業界にとっても大きな脅威となっています。

これから起こるイノベーションとしての自動運転の事例を考えます。
自動運転は、テスラーに代表されるように車本体に注意が行きがちですが、車本体よりも社会インフラへの影響が大きいといいますか、イノベーションが必要な領域が沢山存在します。
例えば、信号や道路標識は不要になるかも知れませんし、自動車保険の概念も変わるかもしれません。
また、自動運転が実現するとなくなる仕事が沢山存在します。
イノベーション型企業に変化し社会の変化を作る出す側に立ちたいものです。

最近は、日本でもイノベーションという言葉をよく聞くようになりました。
ところが多くの場合、イノベーションを技術革新という意味で使っているように思えます。
技術革新は、インベンションやインプルーブメントであって、イノベーションではありません。
イノベーションとは、新しい価値を創造して、顧客や社会に大きな変化を生み出すこと、です。
日本は技術が価値を生み出すという考えから、VEの公式にのっとって、機能を増やしコストを下げるための技術革新に長年全力で対応してきました。この考えの延長線上にイノベーションを捉え、イノベーションを技術革新と誤解したことが、技術をビジネスに結び付ける力を持つ新しいタイプの企業の本質、イノベーションの本質を理解できない原因になっています。

日本がイノベーションが苦手な理由としてイノベーションを技術革新と捉えているからとお話ししましたが、背景にはなにがあるのでしょうか。
ピータードラッガー博士は、企業の目的は顧客創造である以上、企業の基本的な機能はマーケティングイノベーションの2つしかない、と言っています。
マーケティングとは、すでにある欲求を理解し、満足させることであり、これを日本は徹底的にやってきました。
その結果、顧客が何を望んでいるかを調べ、それを製品に結びつけることに全力を注ぎました。
携帯電話の機能の推移を見ると良くわかります。
普通は使わない機能でも、誰かが欲しいと言ったんだろうなというものが沢山存在していました。
マーケティングしかしてこなかった結果、新しい欲求を創り出し、満足させること、というイノベーションに対応してきませんでした。
アップルがやったことは、まさに顧客の行動スタイルや社会システムを変えて、新しい欲求を創り出し、満足させた、ということになります。

イノベーション型企業の利益率の高さを先にお話ししましたが、イノベーションは、競争ではなく独占を狙う戦略であり、何かを一桁変えることであり、ニッチコアから始め、独占的な状態のまま市場を広げる戦略に基づいているからと言えます。
いわゆるブルーオーシャンですね。
日本が得意な技術革新領域は、競争相手が多いレッドオーシャンです。
この真実に日本企業は早く気付くべきと思います。

さて、ここまで、21世紀に企業が生き残っていくにはイノベーション型企業に変化することが必要であることをお話してきました。
では、イノベーション型企業になれば日本の企業は世界の企業と戦っていけるのでしょうか。
日本を支えているインフラ型製品企業の多くは、多品種少量生産型のビジネスモデルが主流です。
このビジネスモデルにおいては、個別カスタムで製品価値を提供することに慣れており、欧米企業における仕様選択型のビジネスモデルに、納期や価格の面で勝てないということになります。
今の日本企業には、イノベーション型企業への移行に加えて、ビジネスモデルの転換が必要になっており、その切り口の一つが、納期や機種展開スピードの抜本的な改革を実現できるモジュラーデザインなのです。

日本の経営者が自社の事業をどうとらえているかというアンケートの結果を纏めた結果、今後3年間というスパンでは今のビジネスモデルで何とか対応できるという回答が8割を超えていますが、5年後になると7割弱になり、10年後になると4割を切っています。
このことからしても、日本企業はビジネスモデルを早急に変え、今いる変節期から脱出し、次の成長期へ移行していく必要があることが良くわかります。

今回は、ここまでにして、次の記事でビジネスモデルの転換のための切り口となるモジュラーデザインについてお話ししたいと思います。

正直なところ、日本を復活させることは今の状況からして非常に厳しいと思います。 然しながら、先人の努力によって我々の時代があったわけで、それを引き継いでいくためにも今、我々が頑張って変化を作っていかないといけないと思っています。 共に奮闘しましょう。

 

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